投資の世界では分散投資は基本中の基本とも言われていますが、その分散投資を実現させる人気商品の一つとしてETF(上場投資信託)があげられます。昨今ではその名称は良く耳にすることも多いETFですが、実際その中身についてはいまひとつ理解されていない方も少なくないようです。
本記事では、ETFとは何かという基礎的な部分から、ETFの種類やメリット/デメリット、ETFで投資に失敗しない選び方のポイントを解説します。
ETFとは何か
「ETF」とは、Exchange Traded Fundの頭文字を取った言葉で、日本語では「上場投資信託」(または「上場投信」)と呼ばれていますが、これは、その言葉どおり、“証券取引所で取引される投資信託”という意味です。
このETFを理解するためには、まず「投資信託」とは何か、というところから解説しましょう。
投資信託とは何か
投資信託とは、ファンドと呼ばれる所にお金を預け、そこにプールされた資金を資産運用のプロであるファンドマネージャーが運用、その運用益から手数料を差引き、投資家(お金を預けた人)に最終利益が分配される仕組みの金融商品です。専門知識がなくても運用の専門家がまとまった大きな資金を複数の投資先に分散して運用するため、投資の幅が広がるというのが特徴です。投資信託の詳細は以下をご参照ください。
さて、ここでETFに話を戻すと、ETF(上場投資信託)も、投資運用をファンドマネージャーに任せるという点では投資信託と全く同じなのですが、決定的に違う点は、ETFは証券取引所に上場しているという点です。これにより、通常の株取引と同じように、誰でも証券取引所に注文を出すことによって、「投資信託」の売買が出来るようにした商品を「ETF(上場投資信託)」といいます。
ETFの投資対象(種類)
前章ではETF(上場投資信託)が何かという基本事項について説明しましたが、実際このETFは日本国内で上場しているものだけでも実に200銘柄を超える商品が存在しています。それでもまだまだ日本市場では発展途上といわれているETFですが、これだけ商品数の多い中で、ETFは一般的に何を対象に運用されているのでしょうか。
指数とは取引所全体や特定の銘柄群の価格の動きを表したものです。日経平均株価やNYダウ平均株価が代表的なものです。例えば、日経平均株価に連動したETFであれば日経平均株価と同じような値動きをすることになります。
なお、全体の割合でいえば株価指数に連動させたETF商品が多くなっています。以下、各項目について概要を説明します。
日本株式(市場別指数)
最もスタンダードなETFと言えるのがこの種類です。
東証一部やマザースと言った日本の証券取引所の指数に連動しています。身近な日本市場に投資することが出来、間接的に日本の企業に投資している事で日本の経済を支えている満足感を得られます。
日本株式(業種別指数)
各業種別の指数を運用対象にしたETFがあります。食品セクター、建設セクターといった特定の業種における複数銘柄の動きを指数化したものに連動された商品となっているため、特定の業界の動きに強い、興味があるといった方には投資しやすいETFと言えます。
日本株式(レバレッジ型指数)
レバレッジとは「てこ」という意味ですが相場の動きに倍率をかけて連動するETFが存在します。数年前から日本で人気となり代表的なものが日経レバレッジ指数ETF(1570)という商品ですが、日経平均の2倍の動きをします。仮に日経平均が前日比で3%上昇すればこのETFは6%上昇しますが、逆に下がる時も同じように2倍の値動きをします。これから株価が上がるだろうという局面で購入すれば利益を得られる事からブル型※ETFとも呼ばれています。
日本株式(インバース型指数)
インバースとは「逆」という意味ですが相場の動きと逆の値動きをするETFが存在します。相場が下がるときに上がります。例えばこれから日経平均が下がるだろうと思えば日経平均に連動するインバース型のETFを購入すれば利益を得ることが出来ます。ベア型※ETFとも呼ばれています。
*ブル(雄牛)とベア(熊)
投資の世界で広く相場の強気・弱気を示す言葉。ブルは強気、ベアは弱気。
諸説あるがブルは角を下から上へ突き上げる仕草から相場が上昇していることを表し、ベアは前足を振り下ろす仕草から相場が下落していることを表すと言われている。
外国株式指数
アメリカやヨーロッパと言った先進国の株式はもちろんの事、新興国の株式指数に連動したETFも存在します。
アメリカの株式指数は歴史的にずっと上昇をし続けており安定性が高い。新興国のETFはその国を応援するつもりで買うのも良いし、うまく行けば短期で大きく伸びる可能性があります。
不動産指数
不動産を対象としたETFが存在します。代表的なものが東証REIT ETFです。一般的に不動産に投資をするのは多くの資金を要しますが、REIT※という現物不動産に投資する上場ファンドは数多く存在しており、内、東証に上場しているもの全ての指数と連動しているのが東証REIT ETFとなります。
※REIT=Real Estate Investment Trust=不動産投資信託
商品(コモディティ)指数
金、銀、原油、穀物といった商品をコモディティと呼びます。それらの商品の値動きに連動するETFが存在します。(ご参考)東京証券取引所ETF一覧
ETFのメリット/デメリット
初心者でも気軽に安定運用が出来ると純資産残高も順調に増え続けている人気のETFですが、投資にあたってはそのメリットのみならずデメリットも理解した上で行うことをオススメします。
ETFのメリット
好きな時に瞬時に売買が可能
ETFは株式と投資信託の良いとこ取りをしたような商品です。好きな時に瞬時に売買出来る上場株式の流動性と沢山の銘柄に一度に投資出来る投資信託の分散効果が同時に得られます。
流動性(好きな時に売買が出来る)というのはトレーダーに取って非常に重要な事です。ETFは取引所に上場していることから流動性が高く、殆どのETFはリアルタイムの価格で即座に取引が成立します。一方、投資信託の場合、売買タイミングは一日に一回のみで、取引価格が決まるのはその日の注文が全て集計された後であるため、この値段で売買をする、ということが出来ません。この観点から投資信託は比較的に流動性が低いと言えます。
手数料が低い(低コスト)
ETFに投資する際のコストは、売買時に掛かる売買手数料と保有期間中継続して掛かる信託報酬です。売買手数料は株式と同じ料率のものが適用され、かなり低めの設定になっている証券会社も少なくありません(松井証券の場合10万円以下までは無料)。
一方、信託報酬とは、投資信託を運用・管理してもらうための費用として運用期間中は支払い続ける必要があるコストのことです。 ただし、こちらは純資産総額に対して何%といった形で信託財産の中から毎日差し引かれる形で支払われるため、別途投資家が支払う必要はありません。当該費用(料率)は0.1%程度とさほど大きな金額ではありませんが、ETFによっても差があります。
少額で購入できる
ETFの最低購入金額は銘柄ごとに売買単位(口数)が決められており、口数と市場価格をかけ合わせたものが購入金額となります。最低購入金額が1万から数万円程のものが一般的です。
分散投資が可能(リスクを分散させた堅実運用が可能)
分散効果の加減は各ETFの商品種類にもよりますが、一般的には多数の銘柄の平均を合わせた指数連動型の商品であることから一定の分散効果は期待できます。(「分散投資」の詳細はココをご参照)
透明性が高い
一般的にETFでない非上場型の投資信託は四半期に一度運用報告を出します。これは言い変えれば四半期に一度しか個別の投資内訳が分からないという事です。その点ETFはその内訳は随時公開されているため自分が何に対して投資しているのか判る分、安心感は高いと言えます。
ETFのデメリット
積み立てが難しい
ETFは銀行口座からの引き落としによる自動積み立てができないため投資信託のようにはいきません。投資信託なら毎月の引き落とし金額を指定して積み立てる事が可能ですがETFの場合は1口の市場価格が常に変動しているためそのような積み立ては基本的にできないのです。したがって反復継続して購入したい場合は、自分自身で買い足す必要があり、実際大きな問題ではないですが、その手間がデメリットと言えるでしょう。
元本保証が無い
ETFは「堅実な投資商品」と前述しましたが、元本が保証されているわけではないため、その点には注意が必要です。そのためETFが対象としている指数が下がればそれだけ自分の資産も目減りしてしまうということになります。
さらにETFには、上場廃止になるリスクというのも存在します。取引高が高く売買が盛んなETFならそこまで心配する必要はありませんが、証券取引所が定める上場廃止基準に該当してしまうと上場が取り消されてしまい、一般の投資家では取引ができなくなってしまいます。これらはETFのデメリットでありリスクとも言えるでしょう。
ETFで失敗しないための選び方
前項にてETFのメリットとデメリットについて解説しましたが、以下ではETFに投資をするにあたって失敗をしないためのポイントをご紹介します。ETFでの投資を始める前に必ず確認し投資を成功させましょう。
運用資産総額の確認
運用資産総額とは、そのETFの資産規模を表す数字です。この数字が大きければ大きいほど人気のある証明であり、沢山の人がこのETFを所有し、売買しているとことを意味しています。当然ですが資産総額の高い商品の方が安全といえます。
スプレッドの確認
スプレッドとは「売気配と買気配の差」を指します。例であげますと最良の売り気配が10,000円、買い気配が9,990円だとするとスプレッドは10円ということになります。このスプレッドが狭ければ投資家にとって購入金額を下げることとなるので、売買が活発となり結果的に流動性が高いことを意味します。
気配数の確認
またスプレッドとは別に、売気配口数と買気配口数を確認してより多くの気配口数が提示されていれば、気配数でも流動性が高いこと確認できます。
信託報酬の確認
信託報酬とは、管理手数料とも呼ばれ、投資信託にて自身の変わりに投資・運用を行ってくれる運用会社へ支払う委託料のようなものです。信託報酬は銘柄を保有しているだけで発生してしまう、つまりランニングコストのようなものなので、気がつけばかなりの報酬を支払っていたと後々後悔するポイントでもあります。同じようなETFであれば当然低い方を選ぶべきでしょう。
レバレッジ型、インバース型のETFには特に注意
日本株式(レバレッジ型指数)で前述しましたように、レバレッジ型のETFは指数に倍率をかけた値動きをしますので、その分ハイリターンになりますが、反面ハイリスクを伴います。それだけであるならまだいいのですが、実は注意しなければいけない点がそれ以外にもあります。
それはレバレッジ型・インバース型のETFは、長期保有には向かないという点です。これは、レバレッジ型・インバース型ETFは日々の上昇のみならず下落に対しても複利的な連動となるため、特に上昇と下落を交互に繰り返すような値動きの局面では、上昇後のマイナスの影響が非常に大きくなります。
このような商品を長期で保有した場合、仮に全体的には上昇局面にあったとしても、日々の値動きの中では上昇と下落が繰り返されている場合、途中経過の下落がパフォーマンスに大きく負の影響を与えてしまいかねません。
従って、レバレッジ型、インバース型のETFは「短期で」市場の動きを予測出来ると思った時にのみ購入すべき商品といえます。
「お勧め」だけで判断せずメリット/デメリットを理解し適正な判断を
以上、ETFの概要について説明しました。
ETFは資産運用のリスクもコストも比較的低く済むため、特に初心者にお勧めの投資方法ですが、一方、きちんとメリットとデメリットを理解した上で、レバレッジ型やインバース型を有効活用することで、投資上級者にとっても十分に高い利益を実現することが可能な大変魅力的な商品と言えるでしょう。
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